突撃サンぺーン市場(思い出)|タイランド編20

突如現れたあまりにも雑多な景色と人混みに、すっかり怖気づいていた僕は、直接ビニール袋というハードルを完全に乗り越え自信をつけた事で、正気を取り戻しつつあった。

さっきまで物騒に思えた風景も、今では買い物客の熱気が溢れるマーケットにしか見えない。

ここは…

サンぺーン市場

バンコクにある中華街『ヤワラート』に隣接するマーケットだ。

『ヤワラート』
観光客にも人気のスポットだ!

僕達が最初にトゥクトゥクに降ろされた場所はちょっとした広場になっていた。

しかしそこから少し奥に入ると、とつぜん細い路地にぶつかった。

そこを右からも左からも一列になって買い物客がどんどん押し寄せてくる。

見たところ道幅は1.5mくらいだろうか。買い物袋をさげた大人がすれ違うのでやっとのありさまだ。

まるで大雨で荒れた川のようだ!

本当にここに入っていくのか⁈

いやむしろ…

入る必要があるのか?

ここで得られるものってなんだろう…
(八木の心境を代弁するシマリス①)

そんな気持ちさえ湧いてくる

全く隙が無い…

僕がまごついていると、不意に手を取られ人波の中へ誘導された。

いわずと知れた

嫁さんだ!

大丈夫!

そのまま少しづつ近づいて‼

そうとう真剣なのが声から伝わってくる。

僕は、嫁さんとの間にいる買い物客をかき分け、無理矢理すぐ後ろにつけた。

片手には、直接ビニール袋に入れられた飲みかけのスイカジュースを持ったままだった。

じゃ、邪魔だ…

正直、かなり窮屈で不便な状況に開始早々ノックダウン気味だ。

これがマーケットか…

とても買い物どころじゃない…

チェ…、チェンマイの比じゃないぞ…
(八木の心境を代弁するシマリス②)

インテリアに良さそうなオモチャや雑貨、アクセサリーなどを売るお店が時おり目に入るが、流れに身をまかせるしかなく通り過ぎていく。

後ろの人に迷惑をかけそうで、興味がある商品があっても立ち止まれないのだ。

そんな気持ちには関係なく、僕達の前で急に足を止め交渉する客がいようものならもう大変だ。避けそこなった瞬間に流れからはじき出され、容易に列に戻ることも出来ず前進できなくなってしまうのだ。

タイの買い物って…

ハード過ぎるだろ!

ほぼ試練じゃないか‼

ボクは旅行に来たんだ…修行に来たんじゃない…
(八木の心境を代弁するシマリス③)

僕の中では物価の差をうまく利用して、ゆっくりとお値打ち品を探すつもりだっただけに、かなり衝撃的だった。

しかしそれは、序章に過ぎなかった…

ぼちぼちこの環境にも慣れ、それほどストレスを感じず歩けるようになったころ…

ブウゥゥゥン、ブーンブゥンー

どこからかともなくエンジン音のようなものが聞こえてきた。

何だろう?

どこかの店で発電機でも使い始めたのだろうか…

僕はそう思い気を取り直して歩き始めた。

すると、しだいに音が大きくなってきた。

ん⁉

近づいてきてる⁇

僕は何気なく後ろを見た。

するとなんと

バイクがこちらに向かって走ってきた!

何故ここを⁈

しかも驚くことに

バイクを大幅にはみ出す大きさの荷物を積んでいる!

僕達はのけぞりながら、やっとの思いでかわした。

信じられない…

唖然としながら後ろ姿を目で追うと、その先でも他の観光客が僕と同じような反応をしていた。

なんて迷惑なやつだ!

僕はそう思った。

しかし不思議なことに、それをとがめる店は一軒もない。とがめるどころか気にもしていない様子だ。

何故だ…

完全に商売の邪魔だろう…

まさか…

これが普通なのか!

普通だというのか‼

そうだ…きっとそうなんだ…
(八木の心境を代弁するシマリス④)

だとしたら

タイの普通って…

危険過ぎるだろ‼

しかし、郷に入っては郷に従えという言葉もある。これからは背後にも気をつけよう…

僕は、この事実を前向きに捉えながらまた歩き始めた。

心を落ち着けてしまえば、マーケットは楽しいものだ。店の天井まで所狭しと並べられた商品が逆にタイに来ていることを実感させてくれる。

やはり旅行は、こうでなくっちゃ!

僕は上機嫌だった。

するとそのうち、小さな十字路に差しかかった。左右を眺めてみるとこちらもお店がぎっしりだ。興味はあるが迷子になる可能性もあるな…

安全第一をモットーとする僕は迷わずまっすぐ進むことにした。

再び歩きはじめると、何故か急に人の流れが止まり前にも後ろにも身動きが取れない状態になった。

んっ⁉

そして、またゆっくりと動き始めた。

なんだなんだ!

この牛歩戦術みたいな感じは‼

余りの進まなさ具合に、僕は苛立ちながら心の中でそう叫んでいた。

そんな状況のなか10分位ノロノロと歩くと、前の人が何かを大きく避けている様子が見て取れた。

そして、いよいよ僕がその辺りに差しかかると目を疑う光景を目の当りにした。

なんと、この細い路地の真ん中で

お婆さんが…

リアカーを引きながらドーナツを売っていたのだ!

ウソだろ‼

どうやってここまで入ってきたの!

しかも、油で揚げながら販売してるし…

油跳ねこぇ~っ、逃げられねぇ~よ~
(八木の心境を代弁するシマリス⑤)

危なすぎるだろ‼

こんな状況じゃ誰も買わないよ…

ありえない…

きっと今度こそ買い物客だけじゃなくて、通り沿いのお店の人たちも迷惑しているはずだ。

僕がそう思った矢先だった。

店員さんらしい人がお店から出てきた。

やっぱり…

さすがに注意しに来たんだろう

まあ当然だ!

言葉は分からないが、店員さんはドーナツ売りのお婆さんに何やら話を始めた。

決して声を荒げることなく、普通っぽいトーンで注意していた

大人だ…

大人の対応だ…

きっと、「手伝ってあげるから広いところに行こう」位の事を言ってるんだろうな。

商売の邪魔までされたのに

僕は、さっきまで自分がちょっとのあいだ前に進めなかった程度で苛立っていたことを恥ずかしく思った。

立派や…ボクにはマネできない…
(八木の心境を代弁するシマリス⑥)

店員さんはリアカーを移動させるため、お婆さんに手を差しのべた。

すると何故かお婆さんは、揚げたてのドーナツを4袋も店員さん渡した。

・・・渡した⁉

そして店員さんは

ドーナツを受け取ると…

ポケットからお金を取り出しお婆さんに差し出した。

・・・

いや普通に買うんかい‼

まさかの揚げたて待ち!

サンぺーン市場って…

歩行者優先じゃなくて

おやつ優先の感じ⁉

そして

これも普通なの‼

僕は超ド級の衝撃を受けた。

こうして僕は、タイの普通に翻弄されながら買い物を続けたのだった。

そして、もちろん僕の手には

直接ビニール袋に入れられた飲みかけのスイカジュースが握られたままだった。

誰か教えてくれー! 普通ってなんだー‼
(八木の心境を代弁するシマリス⑦)

中華街ヤワラートのすぐ近く『サンぺーン市場』の地図↓↓↓

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