バンコクのハードボイルド(思い出)|タイランド編21

フォルクスワーゲンバス

小さなワゴン車と言ってしまえばそれまでだが…

どこか懐かしいフォルムを持つこの車は

オールドカーを愛する者たちを魅了し続けてきた。

(イメージ画像)
写真はタラートロットファイシーナカリン

最近ではコイツの事を

カワイイ~!

というご婦人方も増え

ファンの層をどんどん厚くしている…

まったく羨ましいかぎりだ!

実は俺達もご多分に漏れず、コイツの魅力に取りつかれたくちだ…

そこで…

このワーゲンバスを必ず買うと心に決め

はるばるタイまでやって来た…

おっと、勘違いしないでくれよ!

あくまで新婚旅行のついでだ!

嫁さんは大切にしなきゃいけねぇ…

俺はこれでも優先順位は大切にしたいタイプなんだ

早とちりはいけねぇ…
(八木の心境を代弁するネコ)

それはそうと早くお目にかかりたいもんだぜ…

手に入れた暁には

部屋のインテリアにしようと思ってんだ…

オシャレだろ!

たまらないぜ…

ミニカーってやつは…

・・・

そう僕達は「フォルクスワーゲンバスのミニカー」を求め、サーンペーン市場をさまよっていた。

そして遂に見つけた!

ニー タウライ カップ(これはいくらですか)

数少ない秘蔵っ子のタイ語で声を掛けた。

サムローイ ハーシップ バーツ(350バーツだよ)

日本円で約1000円強位か…

ちょっと買う気になれないな…

ディスカウント?(安くなる?)

今度は英語で訊いてみた。

すると、店主は目の前にあるワーゲンバスのミニカーを3台手に取りながら、「ディスカウントOK!」とジェスチャーを交えながら答えた。

おそらく「3台買うなら安く出来るよ」という意味だろう。

3台もいらないよ…

だけど、今の僕達にはこれ以上交渉する能力が無い。

それに加え、僕のすぐ後ろを他の買い物客がガンガン通り過ぎていくため、その圧迫感から何者かに急かされているような感覚に陥ってしまっていた。

ワーゲンバスだけ3台か…

僕達はやむを得ずミニカーを手に取りながら相談を始めた。

まあ、実力不足ってやつだ…、甘んじて受け入れようじゃないか…
(八木の心境を代弁するネコ)

そんなに必要ないけど…

安くなるなら欲しいしな…

じゃあ、赤と黒と…黄色にする…⁈

3台か…

行く部屋、行く部屋にワーゲンバス?

なんかくどくない⁉

僕達は、なかなか決め切れない。

困り果てふと顔をあげると、不思議そうにこちらを見ている店主と目が合った。

思わず僕も不可解な目線を送った。

すると、店主が近づいて色んなミニカーが置いてある場所を指さしながら「OK!OK!」と声を掛けてきた。

もしかして…

ワーゲンバスだけじゃなくて…

どれでもいいの⁈

僕がそれっぽい表情をすると、店主はニコニコしながら大きくうなずいた

はやく言ってよ‼

僕達は気に入ったミニカーを数台購入し再び歩き始めた。

すると

バタバタ、バタバタバタバタ…

突如テントやトタン屋根に打ち付ける雨音が聞こえてきた。それはどんどん大きくなり、雨足の激しさが容易に伝わってきた。

幸いこの路地は、アーケードのような屋根やお店の軒先が重なっており、ところどころ雨漏りはあるもののそんなに濡れる心配は無い。

しかし、その安心も束の間だった。

なんとアーケードの切れ間に到達してしまったのだ!

目の前の広い通りを車がビュンビュン走り抜けている。

そして、もの凄い勢いで雨が降り注いでいた。

まさに南国のスコールだ

まずい!

傘を持っていない…

このままではずぶ濡れになってしまう‼

そうだ少し待とう!

僕達はその場に留まろうと考えた。

ムリに動かねぇほうがいい時もあらぁーな…
(八木の心境を代弁するネコ)

しかしそれは甘かった…

後方の買い物客がむりやり僕達を前に押し出してきたのだ!

やばい、やばい!

なんとかこらえようと重心を背中側に掛け頑張るが、僕達の事情なんて後ろには分からない。

勢いに負けて足が道路に出てしまった。

うわっー!

瞬く間にヒザから下がベタベタになった。

僕達は慌てて手を振り、トゥクトゥクを呼んだ。

しかし、目の前を走るトゥクトゥクは一台も停まろうとしない…

雨で僕達が見えないのか…

それとも先を急いでいるのか…

とにかく、このままでは財布からパスポートまでずぶ濡れになってしまう

後ろのプレッシャーに耐えるにも

もう限界だ…

僕達は半ばあきらめかけていた

その時だった

目の前に一台のトゥクトゥクが停まった!

思わず僕達が目を合わせると

大きめのサングラスをかけた運転手が親指を立てて無言で「乗ってけよ」アピールをしてきた

困ってんだろ…
(運転手の心境を表現するネコ)

ナンだ!

このあふれるハードボイルド感は‼

なんかこう…

かなり不安だ…

とりあえず僕は、視線を外し見なかった事にしようとした。

しかし、現状はそれを許さなかった…

後ろからのプレッシャーが強まる一方だった。

ダメだ!

このままでは全身いかれてしまう‼

するとそれを見ていた運転手は、トゥクトゥクを僕が外した目線の先に移動させ再度サインを送ってきた。

もちろん無言だ…

・・・

しかし

何をしている!

いいから乗るんだ‼

さあ急ぐんだ‼
(運転手を表現するハードボイルドキャット)

そう言っているようにも見える。

確かに、そのハードボイルドなサングラスの奥には、優しい瞳が隠されているような気もする…

よし!

この男に掛けてみよう‼

僕達はトゥクトゥクに乗り込んだ。

そして「フォーシーズンズホテル・バンコク」とだけ告げた。

ブォォンン~‼

すると運転手は、コクリと一度だけうなずき走り出した。

ハードボイルドな運転手が操るトゥクトゥクは、どしゃ降りの中を軽快に走る

切れ味のある車線変更…

緩急自在のアクセルワーク…

それはもう単なる乗り物ではなかった。

無口だが男気ある運転手とその期待に応えるマシーンが一体となった

ハードボイルド・トゥクトゥクだ‼

きっと彼の愛機には名前があるはずだ…

ジャックかな?

僕には、それを確かめるすべがない

なぜなら…

大切な相棒の名を簡単に口にするはずもないからだ

ハードボイルドだ…

おっと、前に渋滞する車の列が見える

こんなところで足止めか…

そう思った矢先だった。

ハードボイルド・トゥクトゥクは突然向きを変え細い裏路地へと入った。

心配ないぜ…

俺とジャックがついている

後ろ姿がそう語っているように見える。

なんて信頼関係なんだ…

僕は胸の奥が熱くなった。

裏通りはどことなく危険な雰囲気を漂わせていた。

様々なジャンク部品に大量に集められた鉄パイプ…

ジャッキアップされタイヤが一つも付いていない車なども目に入ってくる。

(イメージ画像)
写真はタラートロットファイシーナカリン

ギャングは⁉

ギャングは大丈夫なのか⁈

もしかしたら、何らかの組織の縄張りかも知れない…

僕はドキドキしていた。

そんな事には構わず彼らは走り抜ける

まさにハードボイルドだ…

そうこうするうちに裏通りを抜け何事もなくホテルに着いた。

タウライ カップ(いくらですか?)

僕達が料金を訊ねると…

小さな笑みを浮かべながら

ヌンローイ ハーシップ!(150バーツだ!)

とこたえた。

えっ!

それだけでいいの⁈

なんと、来た時よりも長い距離を乗ったのも関わらず、料金が安かったのだ!

カッコイイ…

カッコよすぎる…

そして、僕達がトゥクトゥクを降りお礼をいうと

こんな事ぐらい…

当たり前だろ…

というような表情を浮かべ、一言も声を発することなくその場を立ち去った。

元気でやりな…
(運転手の心境を代弁するハードボイルドキャット)

ありがとう…

ハードボイルド・トゥクトゥク

そう…部屋に置かれたワーゲンバスを見るたび僕は…

あの日を思い出す…

~サンぺーン市場での出来事~

あばよ…お前が困った時にまた会えるかもな…
(運転手を表現するハードボイルドキャット)

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